2007年12月 茶月
師走・極月・春待月・梅初月
【京都・鴨川 ゆりかもめ】
お茶の世界では、「都鳥」と言います。都を偲ぶ、古人の心が感じられます。・・・(Photo by 松風)→もっと、ご覧になりたい方はリンク先の「京・壷螺暮」から入ることができます。
都会で働く企業戦士の皆様に、日本の心を送ります。
京都の歳時記
12月に入ると、いよいよ本格的な冬がやってきて、ひゅうひゅと虎落笛(もがりぶえ)の音が聞こえてきます。師走の語源は、本来は盆と年の暮れには各家で僧を迎え、先祖供養をしたので僧が忙しく走り回ったといわれています。現代では、一年間、お世話になった方々のご挨拶、大掃除、新春の準備にあわただしい日々が過ぎていきますが、「忙中閑あり」 静かに炉辺に座して独服できる時、茶人の冥利を感じます。
この月の茶趣は、「夜咄の茶」「雪見の茶」「事始めの茶」「歳暮会の茶」など、「チャリテイー茶会」「クリスマスの茶会」などをテーマにしたお茶会も増えてきました。
12/1日は、お献茶式(北野天満宮)が、岡崎の観世会館では井上同門定期能で、『尾道薪能』でおなじみの吉田篤史さんが「葵上」を舞われます。
12/7.8日は、中風封じを祈って大根炊き(千本釈迦堂)が行われます。
12/9日となると、赤穂浪士義士祭り(山科地区)がありますが、尾道・西山本館では「赤穂浪士」にちなんだ料理が出るそうです(要予約)。
12/13日の「事始め」は、迎春の準備に入る日とされ、一年間お世話になった方々に御礼のご挨拶に伺います。煤払い、お正月の準備は禁裏(やたら入るのを禁ずの意)では20日以降で、江戸幕府も宮中に倣って20日と定めましたが、家光の忌日にあたるために家綱の時代から13日となったようです。
12/20日の煤払い(東・西本願寺)、12/21日 終い弘法の市(東寺)12/25日 お身祓い(知恩院)、 終い天神(北野天満宮)と、何百年も同じ日に同じ行事が伝えられていきます。
12/22日は、冬至です。カボチャを食べてユズ湯に入り、無病息災を祈ります。この日に「ん」の重なる食べ物(なんきん・れんこん・きんかん・にんじん・だいこん、あと2つは?)を食べると運が開けると言われています。
12/24日は、京都・嘉祥閣で、井上一門の若手能楽師の方々によって、『橋弁慶』が舞われます。うれしいことに無料です。イブは、日本人らしく「能楽鑑賞」できめてみるのも良いですね。もっと詳しいことを知りたい方は、リンク集の吉田篤史さんから入ることができます。
そして、大晦日の 「おけらまいり」(八坂神社)となります。NHKの番組「ゆく年くる年」で、尾道・西国寺から生中継されることが決まりました。
(尾道・西国寺)
二十四節気(七十二候)
【小雪 末候 12/2頃】橘始めて黄ばむ (たちばな、はじめてきばむ)
【大雪】 たいせつ 12月7日 「雪いよいよ降り重ねる折からなれば也」(暦便覧) 朝夕には池や川に氷を見るようになる。大地の霜柱を踏むのもこの頃から。山々は雪の衣を纏って冬の姿となる頃。
【初候 12/7頃】 空寒く冬となる(そらさむく、ふゆとなる)
【次候 12/12頃】 熊穴にこもる(くま、あなにこもる)
【末候 12/17頃】 鮭魚群がる(さけうお、むらがる)
【冬至】 とうじ 12月22日「日南の限りを行て日の短きの至りなれば也」(暦便覧) 一年中で最も夜の長い日。この日より日が伸び始めることから、古くはこの日を年の始点と考えられた。冬至南瓜や柚湯の慣習が残る日。
【初候 12/22】冬生じ夏枯る(ふゆしょうじ、なつかる)
【次候 12/27】鹿角おつる(しか、つのおつる)
【末候 2008年1/1】雪下りて麦のびる(ゆきおりて、むぎのびる)
七十二候は中国で生まれたものですが、日本に伝わってから気候の違いや日本に生息しない動植物などの名前を入れ替えるなど、時代や編者により多くの版があり、どれが正しいとは言えないのが現状です。
上記は明治時代の伊勢神宮略本暦に記載されたものです。
(椿・太郎冠者)
この時期は、炉開きでお茶の世界のお正月を過ごしたあとに、一年を反省し、寒い冬を実感するという取り合わせや、今年の最後の月であるという意識のもとに新しい年に思いを馳せ、心豊かに古きより新しきにつないでいきたいものです。
茶席の掛け物は、「三冬古木花」「無事是貴人」「光陰如箭」(こういんやのごとし)「放下着」「壺中天」など、寒い冬のさなか、一年間を静かに振り返り、慌ただしさの中に静かな自分だけの時間が流れるような言葉が好まれるようです。
能楽から来ている銘は、「岩橋」・謡曲『葛城』より 「常夜」・謡曲『鉢木』より です。「冬木立」「埋火」「千秋楽」「初氷」「千秋万歳」「無事」「昔語」「都鳥」「敷松葉」など、たくさんの銘があります。
季語は、銘と重なるものも多いのですが、「冬の月」「風呂吹き」「寒さ」「冷たし」「のっぺい汁」「おでん」「山眠る」「注連縄飾る」「門松立つ」などです。
山門に 即非の額や 山眠る 高浜虚子
【12月の着物のお約束】
(織の帯)
12月の着物は、「縮緬」「紬」「手織り紬」の袷に、長襦袢も、「綸子」「錦紗」などの生地に袖無双胴単で、帯は袷の織帯がよろしいようです。
半衿は、「塩瀬」または「縮緬」で、帯揚げも冬物で「三越縮緬」「無地・絞り」帯締めは「冠組」と、冬の季節ににふさわしい装いとなってきます。
お茶会も、日にちがあらかじめ決まっておらず、雪が降った日にお茶会を行う「雪見の茶」など、温かくしてお出かけする機会が多くなります。気温も冷え込み木枯らしが吹き始めるこの季節には、「袷の小紋」や「紬の羽織」は11月と同じですが、コートは道中着タイプが必需品となってきますね。
草履は、皮草履なども温かくていいようです。
お茶会で大切な草履が迷子になることがあります。そんな時は、「わたしの草履」で、自分の草履をしっかりと目印をつけてしまいましょう。→名物裂で作られていて840円です。